この時期は多くの会社で新入社員の研修を行っている。会社によっては直ぐに現場で仕事をしなければならないところもある。大体大手企業では3ヵ月程度研修を受け、その後配属となることが多い。ITベンダーなどはお客様と話ができないといけないので、会社に入ってからみっちりと時間をかけて教育を受け、1年位してからお客様の所へ先輩と一緒に行くところもある。何十年も前になるが、自分の場合大学を卒業後、新入社員は6畳3人の社員寮にぶち込まれ、毎日バスで本社に通い、1ヵ月~2ヵ月程度研修を受けた。その後現場研修がローテーションで1ヵ月~2ヵ月程度あり、日本中の各事業所を回った。海外事業部など一部の人はもう最初から配属先が決まっているので、現場研修は無く直ぐに配属先に行った。普通の社員は6月位になるべく希望に沿うように配属先が決まっていった。自分の場合、研究に行きたかったが、希望が叶わず開発に回されて悲惨な日々を送ることになる。開発は毎日夜の12時まで残業で、当時はコンビニのようなものは無かったので、店はやっていないし、食事はどうしていたのか忘れたが適当に済ませて寝るような日々だった。さすがにそのような日々を送っていると体も頭も朦朧としておかしくなり、他の新入社員も尿に血液が混じるようになって体調を崩す人が多かった。休みの日はインターネットもスマホもパソコンもなかったので、大学の友達に電話をしたり、時々会ったりしていた。他の会社の話を聞くと、結構楽しそうで、充実しているような感じだった。6畳3人部屋というのは自分だけで、他の会社はワンルームで休みも多く自由な感じであった。極めつけはボーナスである。友達の会社では新入社員でも一般の社員と同じように貰っていたが、自分は4月から6月までの分と言うことで、半額位しかなかった。会社によってこんなに違うものなのかと言うのを痛感した。当時はインターネットもなくあまり情報が入ってこなかったので、会社も適当に選んだ自分が悪いのだが、やはり会社によって全然待遇が違うのである。半年も経たないうちに辞めたくて辞めたくてどうしようもなかった。会社を辞めたいような話を実家でしたらとんでもないようなことを言われ、そのころは会社に入ったら一生そこで働くものだと言う風潮であった。社会人になってから友達の結婚式が毎年何組があった。昔は結構結婚が早かったので、女子はクリスマスケーキにたとえられ24歳を過ぎると売れ残りと言われ、そのぐらいで結婚していた。男子も20歳代後半には皆結婚していた。社会人になってから彼女がいなかったので、何とかしなければと思っていたが、会社がそんな感じで彼女どころではない。会社の同僚も結婚している人は少なく、乗り遅れたような人も多かった。そのうち仕事は徹夜が続き残業も3ヵ月で150時間という制限が付き、その時月に150時間以上やっていたので、残り2ヵ月は300時間ただ働きである。自分も体調を崩し耳から血が出るようになった。会社に勤めてから1年半が経ち、そのころは勤め先まで高速道路で通っていた。ある日、嫌だ嫌だと思いながら高速道路で会社に向かった。降りるべきインターが近づくと、何か気持ちが悪くなり、このままいたら彼女ができないばかり命を落とすことになる。もうこんなことは止めようと決意し、インターを通り越した。その瞬間ですべてが終わりすべての始まりであった。これからは自由だと思い、晴れ晴れとした気持ちで次の会社も決めずに辞表を提出。引き止められはしたが、もう関係無い、おさらばだと決意は固く会社を辞めた。それからは実家にも帰れずにサウナなどを転々としながら、過ごし、アパートを借りて、とりあえずは工場でバイトを始めた。丁度会社を辞めてから、急に暇になったので、どういうわけかすぐに17歳の女子高生の彼女ができた。たしか雑誌の後ろにあった彼女彼氏募集みたいなもので、今でいう出会い系サイトのアナログ版のようなものである。自分が24歳か25歳だったので、ちょっと離れていたが、女子高生と付き合ってみたいというのがあったので、そんなことがあるのかと思いながら付き合うことになった。会社を辞めなかったらそんな出会いはなかったので、正解だったと思った。女子高生の彼女は卒業してしばらくしたら別れようということになり、別れることになったが、まあそれはそれでいい経験だっただろう。その後就職活動をしてよっぽど大きな会社以外は全て受かったので、たいして苦労はしなかったが、新しい会社に入り、また彼女が出来、今はその彼女と結婚して子供もできた。今から思えばあの時インターチェンジを通り越した一瞬がその後の全ての流れが変わった瞬間であったということである。まあそれだけではないだろうが、大学を卒業してからの数年間は大きな分岐点が結構あり、それによってその後の人生が大きく変わることがある。実際分岐点でどちらに行ったらよかったのかはあとにならないとわからないし、もうひとつの分岐点に行ったわけではないので、どちらが正しかったのかは結局わからない。自分が正しいと思った方向に行き間違えたら引き返せばいい。それができるのは若いうちだけである。